「衝動的に高額な買い物をしてしまった…」
そんな消費者を保護するための制度が「クーリング・オフ」です。
もしもあなたが衝動的に高額な商品やサービスの契約を結んでしまったなら、この制度を利用することで「契約を無かったこと」にできるかもしれません。
今回はそんなクーリングオフや、それに準ずる返品や契約解除についての制度を分かりやすく解説します。
目次
そもそもクーリングオフとは?対象となるのはどんな契約?
それでは早速、クーリングオフ制度の概要について見ていきましょう。
①衝動的な契約・買い物をしても、一定期間であれば理由なく解約(キャンセル)できる
クーリングオフとは、一言で言うと不意打ち性の高い契約・買い物から消費者を守るための制度です。
この制度を利用できる場合、消費者は理由なく申込みを撤回したり、契約を解消することができます。
強引なセールスなどで冷静に考える余裕が無いまましてしまった買い物を「なかったこと」にできるわけですね。
さらに、この際の送料等は業者側が受け持つ形となります。
ちなみにクーリングオフとは、英語で「頭を冷やす」ことを意味します。
★取引を「なかったこと」にするため、購入した商品などは業者に返却する必要があります。
②ただし対象となるのは訪問販売、通信販売など一部の取引類型のみ
そんなクーリングオフ制度ですが、残念ながらすべてのお買い物に適用されるわけではありません。
クーリングオフ制度が適用される取引は、主に以下の通りです。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 特定継続的役務提供
┗エステ、美容医療、語学教室、学習塾、パソコン教室、結婚相談所などの長期サービス - 訪問購入(買取)
- 連鎖販売取引(マルチ商法)
- 業務提供誘引販売取引
(内職商法、モニター商法等)
クーリングオフが適用される典型的な例として挙げられるのは、高額な布団の訪問販売などですね。
一般的な店頭販売や通信販売はクーリングオフの対象になりませんのでご注意ください。
★ただしお店が認める返品制度やクーリングオフ以外の制度により、契約の取り消しや返品が可能な場合は多々あります。
③クーリングオフができるのは契約から「8日間」または「20日間」
クーリングオフが可能なのは原則として、「申込書面または契約書面を受け取ってから8日間」です。
ただし例外的に、連鎖販売取引(マルチ商法)または業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法等)であれば、20日間までクーリングオフが適用されます。
連鎖販売取引 | 個人を販売員として勧誘し、「商品を別の人に販売すると売り上げの一部が手元に入る」とする取引 ネットワークビジネスと呼ばれることも多い |
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業務提供誘引販売取引 | 仕事に必要だとして商品などを売り、負担を負わせる取引のこと |
④クーリングオフの例外となる取引について
「自動車を購入した場合」「消耗品の購入し、すでに使ってしまった場合」などは、訪問販売に該当する場合でも原則としてクーリングオフの対象外となります。あらかじめご確認ください。
- 3,000円未満の現金取引
- 指定消耗品を使用した場合の使用済み分
(健康食品、化粧品など) - 葬儀関連
- 自動車購入
- 営業や仕事用のための契約
クーリングオフの対象でなくても契約の解除・取消しができる場合
クーリングオフが適用される場面というのは、意外と限定的です。
そこでここからは、「クーリングオフの対象でなくても契約の解除や返品ができる」場合についてお話していきます。
①過量販売(大量の商品の購入)
訪問販売または電話勧誘販売において日常生活に必要な分を大幅に上回る商品を購入してしまった場合には、契約を結んだ時から1年間、契約の解除が可能です。
典型的な例として挙げられるのは、「一人暮らしなのに複数人分の高額な布団を購入してしまった」場合などでしょうか。
この場合の契約の解除方法はクーリングオフとほぼ共通であり、送料についても業者側が負担することになります。
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クーリングオフの手続き方法
★ただし業者側がその販売量の事情を正しく証明できる場合には、契約の解除ができない場合があります。
②虚偽表示
業者が商品について嘘を言っていた場合、または嘘を理由にして契約を結ばせた場合には、「事実と異なることに気づいて1年以内」または「契約締結時から5年以内」に限り、契約の取り消しが可能です。
具体的な例を挙げると、訪問業者に対し実際は必要でない工事の契約を結んでしまった場合などですね。
相手が悪質な業者であった場合は、警察や消費生活センターなどへ相談を行うのも良いでしょう。
③長期契約
エステ、美容医療、語学教室などの継続的なサービスは、クーリングオフの対象とならなくても中途解約が可能です。
入会金を含むすでに支払ってしまった分の料金は戻らないことが多いものの、今後支払うことになるお金を守ることはできるでしょう。
④未成年者など、制限行為能力者による契約
未成年者(18歳未満)や成年被後見人といった制限行為能力者による単独の契約は、本人や法定代理人(主に親権者)によって5年間、取り消しが可能です。
ただし法定代理人の同意がある場合や未成年者が自分の立場(未成年者であること)を偽った場合、処分を許された財産(小遣い)の範囲内での契約などは、取り消しの対象となりません。
また実際に未成年者が可能な取引においては、契約の取り消しを防ぐため親権者の同意を得ていることが前提になることが多いです。
(=仮に許可なく契約を結んでも、自分の立場を偽ったことになる)
そのため実際に未成年者が契約を解除できる場面は限定的かもしれません。
⑤その他、業者が独自の返品制度を設けている場合など
ここまで挙げた状況に該当しない場合でも、お店や業者が独自の返品制度を設けていることは多いです。
ホームページや契約書を確認できるのなら、返品についての項目を確かめてみると良いでしょう。
クーリングオフの対象でない通信販売は、8日以内なら送料負担を条件に返品できる可能性あり
一般的な通信販売は、残念ながらクーリングオフの対象となりません。
ただし購入から8日以内であれば、送料を負担することを条件に返品が可能です。
この権利は「法定返品権」と呼ばれていますね。
ただし「不良品以外は返品ができません」といった返品条件が分かりやすく記載されていた場合はその限りではありませんので、法定返品権を行使できる場面は限られるかもしれません。あらかじめご承知おきください。
クーリングオフの手続き方法
ここからは、あなたがクーリングオフ制度を利用できる場合の手続き方法についてお話していきます。
①はがきで手続きを行う場合
クーリングオフは書面で手続きを行います。
電話や店頭での手続きはできませんので、ご注意ください。
あなたがクーリングオフを利用できる状況にあるのなら、はがきを使って一方的な契約の解除の申し出が可能です。
- 契約(申込み)の年月日
- 申込先の会社
- 販売担当者
- 商品名
- 契約額
- 契約を解除するという意思
- はがきを書いた日付
- あなたの住所と名前
またはがきは簡易書留など、郵便局に記録が残る方法を使ってお送りください。
これは仮に契約先が悪徳業者であった場合、はがきを「見なかったこと」にされることを防ぐためです。
②電磁的記録(インターネット)で手続きを行う場合
現在、クーリングオフの手続きは電磁的記録(インターネット)でも済ませられます。
告知する内容は、はがきを使う場合と変わりありません。
メールアドレスやホームページが分かる場合には、この方法を利用するのが良いでしょう。
★ホームページのメールフォームを利用する場合には、スクリーンショットなどを使い送信の記録を残しておきましょう。
③カード払いでもクーリングオフを利用できる?
クーリングオフ制度は、現金払い・カード払いといった支払方法にかかわらず適用されます。
カードを使いクーリングオフ制度を利用した場合には、後日カード会社を通して支払いの清算がなされることでしょう。
基本的には次回のカードの請求額から、クーリングオフ分が差し引かれる形となります。
④事業者によるクーリングオフ妨害とは
一部の有料でない販売業者などは、クーリングオフの申請を認めない場合があります。
こういった対応は、一般に「クーリングオフ妨害」と呼ばれます。
もしもあなたがクーリングオフを行う権利があるにも関わらずその妨害を受けた場合には、「特定商取引に関する法律」に基づき所定の期間が過ぎた後もクーリングオフが認められます。
トラブルが解決しない場合は最寄りの消費生活センターへ相談を
「クーリングオフの手続きをしたのに業者から応答がない」「明らかに問題がある取引なのに、返品を受け付けてもらえない」などのトラブルが発生した場合には、最寄りの消費生活センターへ、できる限り早く相談するのが良いでしょう。
クーリングオフやそれに準ずる制度を利用できるのであればそれを教えてもらえますし、仮に対応が難しい場合でも、その理由を聞かせてもらえるはずです。
また販売業者によるクーリングオフ妨害を受けた場合など、販売会社に悪質性が認められたときにも、こちらの窓口を利用するのが良いでしょう。
ただし原則として、通話料は有料です。
独立行政法人国民生活センター公式HP「全国の消費生活センター等」
★その他、場合によっては弁護士などの力を頼る必要もあるかもしれません。
この場合は行政の法律相談サービス「法テラス」を利用することで、無料相談が可能です。
クーリングオフとその条件や手続きについてのまとめ
- クーリングオフは訪問販売や長期契約など、一部の取引を8日または20日間「なかったこと」にできる制度。
この際、購入した商品などは返品することになる - クーリングオフが適用されない通信販売などでも返品が認められることはあるが、「不良品以外の返品不可」などの条件が明確に記されていた場合はその限りではない
- クーリングオフは条件さえ満たしていれば、はがきやメールで一方的に通達できる
- トラブルが解決しない場合はお近くの消費生活センターなどへ相談を
消費者の生活を守るためのクーリングオフ制度ではあるものの、利用できる場面は思ったよりも限定的かもしれません。
何らかの消費者トラブルが発生し、上手く対処が取れないという場合には、お近くの消費生活センターなどへ問い合わせてみるのが良いでしょう。