「給料は変わらないのに必要な出費ばかり増えて、生活が厳しい…」
そんな状況にある方は、一定の条件を満たすことで国からお金を借りられる可能性があります。
民間のカードローンの審査に通れない状況でも利用できる制度ですので、「収入が低い」「満足に働けない」といった状況でもチェックしてみる価値あるでしょう。
そこで今回は「国からお金を借りる」または「給付を受ける」主な方法について、分かりやすくまとめました。
読み進めていただければ、今のあなたがとるべき行動が分かります。
目次
国からお金を借りる「生活福祉資金貸付制度」とは
「国からお金を借りる」ための制度として、真っ先に挙げられるのが「生活福祉資金貸付制度」です。
まずはこちらの制度について、詳しく見ていきましょう。
①生活にお困りの方、感染症の影響を受けた方は国からお金を借りられる可能性あり
現在、「生活福祉資金貸付制度」を利用できるのは以下の条件を満たす世帯となります。
低所得者世帯 | 民間業者から必要な資金を借りられない世帯 主に市町村民税が非課税となっている世帯 |
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障害者世帯 | 障害者手帳(身体・精神)、養育手帳の交付を受けた人が暮らす世帯 |
高齢者世帯 | 65歳以上の高齢者が暮らす世帯 |
特例 | 新型コロナウイルス感染症拡大を受け収入が減少し、緊急かつ一時的な借入が必要な世帯 |
新型コロナウイルス感染症拡大を受け収入が減少し、収入減少が長期にわたるために借入が必要な世帯 |
貸付の単位は「世帯」ですので、申込者自身が障害者や高齢者でなくても、該当する方と生計を共にしていたならば「生活福祉資金貸付制度」への申し込みが可能です。
また現在は、これまでの「低所得者世帯」の他にも、新型コロナウイルス感染症により収入が減額した世帯が融資の対象となっていますね。
★上の条件を満たしていない方は、生活福祉資金貸付制度を利用することはできません。
生活サポート基金(関東の一部地域限定)を含む民間の貸付制度や債務整理、その他の行政支援制度の利用などをご検討ください。
②連帯保証人がいれば無金利になるが、保証人がいなくても低金利(1.5%)で借入可
生活福祉資金貸付制度は借入目的によって、あるいは「連帯保証人を設定できる場合」において無利子で利用できます。
また上に該当しない場合(連帯保証人を設定できない世帯が生活費を借りる場合など)でも、年1.5%の低金利で利用できますのでご安心ください。
民間の銀行カードローンの金利が後者の10倍程度であることを考えると、この金利の低さがよくわかりますね。
★不動産担保型の借入の場合は設定金利が異なります。
③不動産担保ローンも選択できるが、原則として担保は不要
生活福祉資金貸付制度を利用する上で、原則として担保は必要ありません。
高齢者世帯は居住用の住居を担保に入れてお金を借りることもできますが(不動産担保型生活資金)、基本的にこの制度は無担保で使えるものと考えてよいでしょう。
④生活福祉資金貸付制度の使い道は完全に自由ではない
そんな生活福祉資金貸付制度ではありますが、その用途は完全に自由、というわけではありません。
現在認められている、生活福祉資金貸付制度の利用目的をまとめると以下のようになります。
資金の種類 | 用途 |
---|---|
生活支援費 | 生活再建までの間に必要な生活費用 |
住宅入居費 | 住居の確保に必要な費用 |
一時生活再建費 | 生活を再建するために一時的に必要かつ日常生活費で賄うことが困難である費用 ※債務整理に必要な費用などを含む |
福祉費 | 冠婚葬祭を含む、福祉に必要な費用 |
緊急小口資金 | 緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸し付け |
教育支援費 | 高等学校、大学又は高等専門学校を修学するために必要な経費 |
就学支度費 | 大学又は高等専門学校への入学に際し必要な経費 |
「生活再建のために必要な費用」「福祉に必要な費用」の幅が広いため、実際のところは多くの目的で利用できるかと思います。
とは言え民間のカードローンとは異なり、ギャンブルやレジャーなどのための申し込みは認められていません。
★より詳しい貸付項目や項目ごとの融資上限額については、厚生労働省の公式HPをご確認ください。
⑤「緊急小口資金」なら申し込み~借入まで最短1週間と銀行カードローン並み
生活福祉資金貸付制度は利用までに数週間〜が掛かるのが一般的です。
ただし「緊急小口資金」という制度を使えば最短1週間で貸付金が交付されます。これは、銀行カードローンで融資を受けるまでの期間と殆ど同じです。
「緊急小口資金」の貸付限度額は最大でも10万円となっていますが、目的や連帯保証人の有無を問わず利子が設定されていません。
10万円以下のお金を、できる限り急いで調達したいという場合には、この制度を利用すると良いでしょう。
★借受人と世帯主が均等割・所得割いずれも住民税非課税である場合、緊急小口資金の返済が免除される可能性があります。
詳細については厚生労働省の公式HPをご確認ください。
⑥申し込みは「お住まいの市区町村の社会福祉協議会」へ(※郵送可)
生活福祉資金貸付制度への申し込みは、原則として「お住まいの市区町村の社会福祉協議会」宛てとなります。
住所ごとの申込先は、厚生労働省の公式HPより確認できます。
ただし申込みの方法は自治体によって異なります。
まずはあなたの地域の社会福祉協議会に電話をかけ、「生活福祉資金貸付制度を利用したい」旨を伝え、指示を仰ぐのが良いでしょう。
⑦注意!あくまで「貸付」なので、審査に通るには最低限の返済能力が必要
生活福祉資金貸付制度の貸付の対象世帯は、原則として「生計の維持が困難な世帯」です。
ただしこちらの制度は、後述の生活保護などとは異なり、あくまで一時的に必要な費用の「貸付」を行う制度です。
そのため、審査に通るためには最低限の返済能力が要求されますのでご注意ください。
慢性的に生活費用が足りていない状況なら、後述の「給付」制度への申し込みをご検討ください。
★ただし生活福祉資金貸付制度においては返済までの据置期間が設けられていることがあります(「生活支援費」の借入なら最長6ヶ月)。
一時的に生活苦にある、失業してしまった、という場合でも、据置期間中の生活再建が見込めるなら、生活福祉資金貸付制度を利用できる可能性があるでしょう。
お金を返す必要がない、行政の「給付」制度について
ここからは行政が取り扱う、支給されたお金を返す必要がない「給付」制度についてお話していきます。
①「住居確保給付金」は住む場所を失った方、または失いそうな方への支援制
「住居確保給付金」とは名前の通り済む場所を確保するための給付金で、住所を失った方・またはそうなりつつある方が支給の対象となっています。
基本的に、この制度へ申し込めるのは離職者や廃業者、収入が大きく減少してしまった方ですね。
(1)主たる生計維持者が ①離職・廃業後2年以内である場合 もしくは ②個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合 |
(2)直近の月の世帯収入合計額が、 市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12(以下「基準額」という。)と、家賃(但し、上限あり)の合計額を超えていないこと |
(3)現在の世帯の預貯金合計額が、各市町村で定める額(基準額の6月分。ただし、100万円を超えない額)を超えていないこと |
(4)求職活動要件として (1)の①の場合 ハローワークへ求職の申込みをし、誠実かつ熱心に求職活動を行うこと (1)の②の場合 誠実かつ熱心に求職活動を行うこと |
支給額は生活保護制度の住宅扶助額と同額ということで、地域によって以下のように定められます。
一級地 | 53,700円 |
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二級地 | 45,000円 |
三級地 | 40,900円 |
お住まいの地域の「級地」設定については、以下の厚生労働省の公式PDFをご確認ください。
CHECK厚生労働省公式HP「お住まいの地域の級地を確認[PDF形式:202KB]」
制度としては、「生活保護費の中の家賃相当額のみの支給を受ける」という形となりますね。
ちなみに支給期間は原則として3ヶ月間ですが、一定条件を満たすことで2回の延長を行い、最大9ヶ月間受給することが可能です。
②「一時生活支援事業」では住居のない生活困窮者に対し、宿泊場所や食事を提供
「一時生活支援事業」とは、住居を持たない生活困窮者に対し、一時的に宿泊場所や食事を提供する支援制度を言います。
支援期間は原則として3ヶ月以内ですね。
宿泊場所の提供(個室、風呂・トイレ・台所等は共用)
食事(3食)
最低限の衣類等の提供
住居探し・就職活動の支援
基本的にはこの期間中に、行政のサポートを受けながら求職活動をする形となるでしょう。
申込みの窓口は自治体によって異なるため、この制度を利用したいという場合には「(自治体名) 一時生活支援事業」などで検索をかけてみることをおすすめします。
③「就労訓練事業」「就労チャレンジ事業」では就労のためのサポートを受けられる
「就労訓練事業」「就労チャレンジ事業」は名前の通り、「これから働けるようになる」ための支援を行う事業を言います。
いきなり就労、というとハードルが高く思えるかもしれませんが、こちらはそういった方に向けて、少しずつステップアップを行っていくような制度ですね。
ひきこもり状態にある、離職期間が長い、心身に病気や障害があるという理由ですぐに一般の仕事に就くことは難しいという状況でも、この事業を通すことで社会復帰を目指せることでしょう。
事業者の意向や条件が合えば、訓練後に採用され継続的に働くことも可能です。
④「求職者支援資金融資」は職業訓練受講給付金を利用しても生活費が不足する方へ
「求職者支援資金融資」は、現在すでに月10万円の求職者支援制度を利用しながらも、生活費が不足するという方に向けた融資制度です。
貸付額は配偶者の有無などの条件により、月5万円または10万円が上限となります。
申込条件を満たしている方は、ハローワークを通してこの制度への申込みが可能です。
ただし求職者支援制度とは異なり、あくまで「融資」であるため返済が必要なことと、年3%相当の利息が発生する点についてはあらかじめご確認ください。
★訓練終了月の3ヶ月後までは元金据え置き期間が設けられ、毎月の返済額は利息のみとなります。
1ヶ月あたりの利息は、融資額5万円あたり125円前後です。
⑤「母子父子寡婦福祉資金貸付金」は20歳未満の子供がいる母子家庭・父子家庭向け
「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」は、20歳未満の児童を扶養している母子家庭・父子家庭のための制度です。
資金の種類(借入目的)は、生活資金から医療介護資金、教育資金、技能習得資金、事業開始資金、結婚資金に至るまで幅広いです。
申込条件を満たしているのなら、こちらもチェックしておきたい支援制度だと言えるでしょう。
金利は借入目的によって変わるものの、保証人を設定できるのなら無利子、そうでなくても年1.0%程度で利用できることが一般的です。
限度額や据置期間、その他の詳細については以下の公式HP情報をご確認ください。
CHECK男女共同参画局公式HP「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」
⑥「家計改善支援事業」は家計を改善し、生活費をやりくりするための相談を受け付け
「家計改善支援事業」とは、多重債務など多額の借金やカードの乱用、その他「お金を管理できない」状況にある世帯に対し、家計の見直しや相談を行い、最終的に相談者が家計を管理できるよう支援する事業です。
借金で首が回らない、税金を滞納している……など、相談しづらい内容にも対応してもらえますので、就労の能力そのものではなく「お金の管理」に問題がある状況なら、こちらを利用してみると良いでしょう。
⑦就労できない無職の方はもちろん、そうでなくても「生活保護」の相談は可能
病気や障害などを理由に現在働けないという方はもちろん、「働いているのに生活が厳しい」という方であっても、生活保護を利用できる可能性があります。
世帯収入など、生活保護を受けられる基準は、家族構成やお住まいの地域などによって異なります。
生活を営むために金銭的なサポートが必要、という場合には、以下のページも併せてチェックしてみてくださいね。
★ここに挙げた制度以外にも、都道府県や市区町村が独自の支援制度を提供している場合があります。
市区町村には必ず生活支援のための窓口がある:まずは電話などで相談を
ここからは、各支援制度を利用する方法についてお話していきます。
①必要書類や出向くべき場所・時間を確認しておこう
市区町村は、必ず生活支援についての窓口を用意しています。
そのためまずは、「(市区町村名) 生活支援」などで検索をかけ、出てきた電話番号に連絡をしてみると良いでしょう。
各市区町村のHPからも確認できます。
相談に出向くべき場所や時間、必要書類についての案内を受けられるはずです。
また申込み先が「生活福祉資金貸付制度」に決まっているのであれば、厚生労働省の公式HPから連絡先を確認できます。
②平日に市役所に向かうことが難しくても、土曜日開庁などを行っている自治体は多い
自治体によって詳細は異なるものの、「生活福祉資金貸付制度」以外の行政の支援制度は、対面での面談や申し込みが必要となることが多いです。
市役所の開庁時間は「平日8時30分~17時」頃となっていることが多いものの、現在は月に数回、休日開庁を行っている自治体も増えています。
平日に市役所などに向かうことが難しい場合には、問い合わせの際にその旨を伝えておくと良いでしょう。
その他の「国からお金を借りる」主な方法
ここからは、生活苦にある方「以外」を対象とした国の融資制度について触れさせていただきます。
①国の教育ローン(教育一般貸付)は銀行などより安い金利で利用できる
日本政策金融公庫とは、民間に対しても融資を行う財務省所管の特殊な金融機関です。
この組織が取り扱っている、代表的な融資制度が「国の教育ローン(教育一般貸付)」ですね。
一般的な銀行の教育ローンに比べても低金利(年1.8%)で借りられる上、特別に生活が苦しいというわけでなくても利用できるため、国の融資制度としては最も申込みやすいと言えるでしょう。
またこの制度は、高校や大学への入学資金の他、「専門学校への入学」「進学に伴う一人暮らしに必要な費用」などのためにも利用できます。
CHECK日本政策金融公庫公式HP「教育一般貸付 (国の教育ローン)」
★この制度は、日本学生支援機構の奨学金との併用も可能です。
奨学金は学生自身が返済義務を負うのに対し、教育ローン(国・民間を問わず)は原則として親権者が返済義務を負う形となります。
②日本政策金融公庫の融資制度(主に中小企業のための事業資金)は創業支援~再生支援まで幅広い
日本政策金融公庫は、主に中小企業に対して多くの融資制度を提供しています。
その内容はスタートアップ(創業支援)から倒産寸前の企業への支援(再生支援)まで非常に幅広いですね。
あなたが何らかの事業を営んでいる、もしくはこれから営みたいと考えているなら、これらの制度もチェックしておきたいところです。
③社会福祉協議会を通したボランティアセンター(善意銀行)を利用できることも
あなたの状況やお住まいによっては、社会福祉協議会を通してボランティアセンター(善意銀行)を利用できるかもしれません。
徳島県ではじまったこの制度では、住民の寄付や寄贈を高齢者家庭や障害者家庭などに分配しています。
車いすの貸し出しなど具体的な支援を受けられることもあるため、何かお困りごとがあるのなら社会福祉協議会に相談してみるのも良いでしょう。
この社会福祉協議会とは、生活保護などへの申込窓口でもあります。
「最短1週間」の融資を待てなかったり、審査に通らなかったらどうすればいい?
「生活福祉資金貸付制度」の緊急小口資金の借入には、最短でも1週間ほどの日数がかかります。
また、必ずしもこの制度の審査に通過できるとも限りません。
そして借入を待つ間に住所を失ったり、生活ができないといった状況になってしまった場合には、その旨を市区町村の窓口やNPO法人などに相談してみると良いでしょう。
場合によっては「臨時特例つなぎ資金貸付制度」といった制度や、住居・食料を提供する民間シェルターを利用できるかもしれません。
ただし土日祝日や開庁時間、その他地域やあなたの状況を理由に、必ずしも希望する支援を受けられるとは限りませんのでご注意ください。
国からお金を借りる方法についてのまとめ
- 「生活福祉資金貸付制度」を使えば最短1週間で、生活再建に必要なお金を借りられる
┗貸付対象は休業・失業などによって収入が減少し、生活の維持が困難な世帯 - あなたの状況によっては生活保護をはじめとする「給付」制度を利用できる可能性も。
生活が厳しい状況なら、市区町村の生活相談窓口に問い合わせて相談しよう
実際のところ、適切な支援制度は申込者の置かれた状況によって大きく異なります。
そのため現状を改善するための大きな一歩が、生活支援の窓口の方との「個別相談」となることも多いでしょう。
利用したい制度が「生活福祉資金貸付制度」に決まっている場合は、そのまま申し込みを行っても問題ありません。
より詳しく就労や家計についての相談をしたいという場合には、市区町村の相談窓口をチェックできると良いですね。