「新しいアプリを使おうとしたら、「資金決済法等に基づく表示」が表示された。
何が書いてあるかよくわからない」
「資金決済法等に基づく表示」は、資金決済法という法律によって、サービスを提供する側が示さなければならない情報です。
利用者にとって大切な情報も載っています。
このページでは、「資金決済法等に基づく表示」を解説します。
目次
「資金決済法に基づく表示」とは何か
アプリやWebサービスで表示される「資金決済法に基づく表示」は、資金決済法という法律で決められた情報を、利用者に示すためのページです。
資金決済法は、資金決済システムの安全性・効率性・利便性を上げることを目的とした法律です。
アプリやWebサービスで以下の3つを行うときには、必要な情報の提示が必須となります。
- 前払式支払手段の発行
→商品券やネット上で使えるプリペイドカードを買う場合 など - 銀行等以外の者が行う為替取引
→アプリ内通貨を送金する場合 など - 暗号資産の交換等及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算
→仮想通貨で取引をする場合 など
①「資金決済法に基づく表示」に必要な情報
前払式支払手段を発行する人や会社は、法律で定められた情報を利用者に示す必要があります。
そのためにあるのが「資金決済法に基づく表示」のページです。
2つの法律に書かれた「提示が必要な情報」は以下の8項目です。
- 氏名、商号又は名称
- 前払式支払手段の支払可能金額等
- 物品の給付若しくは役務の提供を請求することができる期間又は期限
- 利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所又は事務所の所在地及び連絡先
- 前払式支払手段を使用することができる施設又は場所の範囲
- 前払式支払手段の利用上の必要な注意
- 未使用残高又は当該未使用残高を知ることができる方法
- 約款若しくは説明書又はこれらに類する書面が存する場合には、当該約款等の存する旨
(1)氏名、商号又は名称
発行している個人や会社の名前です。
(2)前払式支払手段の支払可能金額等
前払式支払手段を買ったり使ったりするにあたっての上限を示します。
- 一度に購入できる上限額や数量の限界
- 1カ月あたりに購入できる上限額や数量の限界
- 1回あたりに使える上限額や数量の限界
- 利用者の年齢による制限
(18歳未満は〇〇円分まで など)
(3)物品の給付若しくは役務の提供を請求することができる期間又は期限
前払式支払手段を持ち続けたり、それによってサービスのランクなどを得たりできる期間や期限です。
- 前払式支払手段の保有期間
- 前払式支払手段の失効期限
- 前払式支払手段の保有で得たランクなどがいつ失効するか
(4)利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所又は事務所の所在地及び連絡先
利用者からの苦情や相談に対応する、営業所や事業所の所在地と電話番号です。
アプリやサービスで、前払式支払手段にまつわるトラブルがあった場合は、ここに載っている電話番号等に相談することになります。
(5)前払式支払手段を使用することができる施設又は場所の範囲
前払式支払手段を使えるアプリ・サービスはどれなのか明記します。
特定の施設でしか使えないアプリ内通貨などの場合、施設名もここに書かれます。
(6)前払式支払手段の利用上の必要な注意
アプリ・サービスからの返金ができないことや、サービスが終わる場合の扱いなどが書かれます。
詳しく書かれた別のページにリンクされている場合もあります。
(7)未使用残高又は当該未使用残高を知ることができる方法
購入してまだ使っていない前払式支払手段の残高を、どこで確認できるか示します。
(8)約款若しくは説明書又はこれらに類する書面が存する場合には、当該約款等の存する旨
アプリやサービスの説明書がある場合には、明記しておく必要があります。
利用規約などのリンクが貼られていることが多いです。
★法律に指定はありませんが、前払式支払手段の名称(ポイントやサービスの固有名)が記載されていることも多いです。
②前払式支払手段の発行
前払式支払手段とは、商品券・プリペイドカードなど、以下4つの条件にすべて当てはまる決済手段のことです。
- 金額・サービスの数量(個数や本数など)が、記載されているか、データとして記録されていること。
例①商品券に金額が書かれている
例②アプリ内に金額の表示がある - 記載・記録されている金額、または物やサービスの数量に応じた対価が支払われている
例①アプリ内に表示された金額と同額をコンビニで支払って、プリペイドカードを買っている - 金額やサービスの数量(個数など)が、記載されているかデータとして記録されている証票・財産的価値と結びつけられた番号や記号などが発行されている
例①支払った金額に応じた商品券が発行される
例②支払った金額に応じた、プリペイドカードの番号が発行される - 物を購入するときやサービスを受けるときに、証票や番号や記号などが、提示・交付・通知といった方法で使用できる
例①商品券を店員さんに渡して利用できる
例②プリペイドカードの番号を入力し、ゲームなどを購入できる
「資金決済法に基づく表示」は、前払式支払手段が発行されるとき必要になります。
③銀行等以外の者が行う為替取引
為替取引とは、現金でない状態でお金のやり取りをすることです。
国内で行われるものを内国為替、通貨を交換しつつ外国と行うものを外国為替と呼びます。
この為替取引を、銀行等以外がすることは法律で禁止されています。
(銀行法)
ただし、別の法律(資金決済法)によって、金融庁の登録を受けた資金移動業者であれば、為替取引をしてもよいことになっているのです。
銀行等以外の者が行う為替取引の例
(インターネット・モバイル型)
アカウントを作る
アカウント内の残高に変換
銀行口座の預金に変換
資金移動業者は、利用者がアカウントを作る前に「資金決済法に基づく表示」を見せなくてはなりません。
④暗号資産の交換等及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算
暗号資産とは、電子データ上の財産です。
資金決済法第二条では、以下のように定められています。
- 物を買ったり仕事をしたりしたときに対価として受け取ることができる
- 不特定の相手と売り買いができる
- 物や仕事を買うために使える
- 電子情報として受け渡しができる
物や仕事と交換するためには、暗号資産を提供する業者のWebサイトやアプリなどに、アカウントを登録する必要があります。
その前に、提供元は「資金決済法に基づく表示」を提示しなくてはなりません。
★「銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算」は、普段アプリやサービスを利用しているときには、ほぼ関わることはありません。
為替取引は、現金を使わないお金の受け渡しのことです。
複数の銀行をまたいで為替取引をした場合、銀行同士でお金の貸し借りが発生することになります。
2つの銀行を通して為替取引をする例
1万円振り込む手続きをする
『1万円が振り込まれた』データが送られる
A銀行はB銀行に
1万円を代わりに払ってもらった状態
引き出せるようになる
この例では、A銀行はB銀行に対して債務を負っています。
銀行などの間でお金が移動したときに発生する債務は、1日に1回、各銀行が日本銀行に預けた金額を増減することで、まとめて精算されます。
これを資金清算と呼び、内閣総理大臣の免許を受けた業者でなければすることができません。
(2022年10月現在、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークのみ)
この清算時にも「資金決済法に基づく表示」が必要になります。
「資金決済法に基づく表示」はお金を払う時点で確認できなければならない
「資金決済法に基づく表示」は、プリペイドカードやアプリ内通貨の発行に際して表示されます。
お店での支払い、インターネットバンキングの振込など、お金のやり取りをする前には、確認できていなければいけない情報なのです。
また、「前払式支払手段に関する内閣府令」では、「資金決済法に基づく表示」についてより細かく定められています。
前払式支払手段の発行のときには、資金決済法で決められた情報を、その前払式支払手段に表示する方法により、利用者に提供しなければいけません。
- 前払式支払手段と一体となって渡される書面その他の物
例①商品券 - 利用者の使う電子機器のファイル
例②アプリ内の画面 - 利用者の使う電子機器のファイルからアクセスできる別ファイル
例③アプリなどからアクセスできる別のアプリの画面 - 利用者から見られるようにした、発行者の持つファイル
例④アプリなどからアクセスできる業者のWebページ
さらに、利用者に不利にならないよう、記録することができるようにするとも決められています。
- アプリの画面などは印刷できければならない
(スクリーンショットを禁止できない) - Webページなどは、利用者が見てから3か月間、消去・改変ができない
お金を払う画面が表示されるまでに、「資金決済法に基づく表示」がなかった場合、もしくは合っても記録ができなかった場合は、詐欺を疑うことができます。
まとめ
- 「資金決済法に基づく表示」は法律で決められた情報を、利用者に見せるためのページである
- 発行している個人や会社の名前
- 前払式支払手段を買ったり使ったりするにあたっての上限
- 前払式支払手段を持ち続けたり、それによってサービスのランクなどを得たりできる期間や期限
- 利用者からの苦情や相談に対応する、営業所や事業所の所在地と電話番号
- 前払式支払手段を使えるアプリ・サービスはどれなのか
- アプリ・サービスからの返金ができないことや、サービスが終わる場合の扱いなど
- 購入してまだ使っていない前払式支払手段の残高を、どこで確認できるか
- アプリやサービスの説明書があるか
(利用規約へのリンクなど)
- 「資金決済法に基づく表示」は、お金のやり取りをする前に確認できていなければいけない
難しい言葉が多くややこしい文章ではありますが、知識があるだけでも、安全に利用する助けになるはずです。
面倒だと読み飛ばさず、重要事項だけでも目を通してみて下さい。